Welcome to my blog

『沈まぬ太陽アフリカ篇』山崎豊子/流刑の男 恩地元の運命と結末

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

読書感想ブログです。たまにネタバレするかもしれません。ホームベーカリーGOPANのレシピも扱っています。


Total:
現在:

『沈まぬ太陽アフリカ篇』山崎豊子/流刑の男 恩地元の運命と結末 

山崎 豊子さん
『沈まぬ太陽』アフリカ篇

巨大組織に闘いを挑んだ男の運命―





あらすじ&感想


広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命―。人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける。

山崎豊子さんの本を読むのは『白い巨塔』以来です。
かなりボリューミーな3冊を読みおわっての感想は、やりきれないくらいの無情を感じました。
これは、さいごの「会長室篇」を読み終わった直後に感じた思いです。
『沈まぬ太陽』は涙なくしては読めません。
特に「御巣鷹山篇」では、溢れる涙が止まりませんでした。

映画にもなったこのお話は、WOWOWでドラマ化が予定されています。
上川隆也さんが主人公を演じます。
行天四郎役には、渡部篤郎さん。
この2人のやり取りにも目が離せませんね。

私が読んだのは・・・
山崎豊子全集21~23の三冊です。
「アフリカ篇」、「御巣鷹山(おすたかやま)篇」、「会長室篇」 とあり、最後に対談やエッセイなども掲載されていました。
(文庫版では5冊ほどの分量になっています。)

1995年から連載された『沈まぬ太陽』。
ある航空会社で実際にあった懲罰人事、そして御巣鷹山で起きた飛行機事故を元にして描かれています。
モデルとなっているのは日本航空(JAL)
本書では国民航空となっています。
そして本書の主人公、恩地 元のモデルとされているのが、小倉 寛太郎さんです。
懲罰人事の対象とされ、あしかけ10年にも及ぶ海外勤務を余儀なくされた人です。

今回から3回に渡って一冊ずつのレビューを書いていきたいと思います。
まずは、「アフリカ篇」です。

※この小説はモデルがいるものの脚色されている部分が多く、フィクションとノンフィクションが入り交じったものになっています。


無残で理不尽な懲罰人事


「アフリカ篇」では、主人公である恩地の海外生活での苦難や孤独、それを課した理不尽な会社の対応と、人事異動に至るまでが描かれていました。
あまりにも酷い仕打ちに唖然としていまいます。
2年の約束での海外勤務だったはずが、あしかけ10年にも及ぶことになる。
カラチ、テヘラン、ナイロビ・・・と各地をたらい回しにされるのです。
一時期は家族も一緒に海外で暮らしますが、ナイロビの辞令を受け単身赴任になります。

「アフリカ篇」で私が思わず涙したシーンが2つあります。
一つ目はナイロビに発つ日、テヘランの空港での家族との別れのシーンです。


りつ子は、夫が遠く海を隔てたアフリカの僻地へ飛ばされることの意味を承知し、一時間後には、東と南とに別れねばならぬ耐え難さに、口を噤んでいた。



妻子を乗せた飛行機が発つと、恩地は声を殺して嗚咽します。
その場面はやり切れなさがありました。
思い出してしまうと涙が・・・。

二つ目は、恩地がやっと日本に帰れる時です。
それは安堵の涙でした。

長い海外勤務の末、恩地は孤独な心を癒すためにハンターにのめり込みます。
あまりにも理不尽な待遇に対する怒りを人間に見立てた剥製にぶつけるシーンがありました。


ふらつく足で二階の寝室へ入り、護身用のライフルを取り出して来ると、壁に掛かっているバッファローの剥製の頭をぶちぬいた。



憎い上司の名前を叫びながら次々と剥製をぶちぬく恩地のシーンが忘れられません。
孤独と怒りに苛まれ、もうどうしようもないギリギリのところまで追いつめられていたんだ・・・。





危うい安全管理


主人公は、なぜ左遷のような人事をうけることになったのか。
発端となったのは労働組合の委員長になったことでした。


社内の一部特権階級だけが、優雅な待遇を満喫しているが、大多数の社員は、給与、労働条件ともに公務員にも及ばない、乗員は外人パイロットの半分、整備士は街工場に毛が生えた程度、われわれ地上職にしても、他の会社に就職した友達に云えないような給料と劣悪な環境



まるで差別のような最悪な会社ですね。
委員長になるつもりはなかったのですが、友人の一言に押されて決心をします。
そして聞き入れない会社に対しストライキを起こし、アカのレッテルを貼られてしまう。
ここの部分は、もうちょっと上手く立ち回ればこんなことにはならなかったのかなとも思いましたが・・・。
結果、海外へ追いやられることになります。
それでも会社を辞めない主人公は凄いと思いました。
一緒に戦ってくれた労働組合のメンバーのことを想えばこそだったのかもしれません。

『沈まぬ太陽』では、1985年に御巣鷹山で起きた日本航空飛行機事故を扱っています。
(そのことについては次回のレビューでふれることにします。)
「アフリカ篇」では、その前に起きたものについても書かれていました。
1972年のニューデリー墜落事故。
同年、モスクワでの事故です。

それを読んで感じたことは危うい安全管理でした。
パイロットや整備士の過酷な勤務や、飛行機の数に対しての人手不足。
それに増して差別的な待遇・・・。
本書を読むかぎり、起こるべくして起こってしまった事故と言えるかもしれません。


宿命のライバル 行天四郎


まえに読んだ山崎豊子さんの『白い巨塔』。
(本もドラマも面白く、両方とも好きなんです。)
そこには宿命のライバルとも言える2人の登場人物がでてきます。
財前五郎と里見脩二。

『沈まぬ太陽』にも、主人公の宿命のライバルと言える人が登場します。
行天四郎です。
(架空の人物でモデルはいないようです。)
恩地は左遷人事でカラチへ。
行天は出世してサンフランシスコへ。
・・・やがて最後の「会長室篇」では常務取締役になります。
かつては友人でもあり、よき相談相手でもあったはずの2人。
この人事により、袂を分かつことになります。
その後の2人のやりとりにも心を砕かれました。





アフリカの大地と太陽


645ページにも及ぶ「アフリカ篇」。
最後には、山崎豊子さんと羽仁進さんの対談が掲載されていました。
そこには山崎さんの熱い思いが語られています。


現代の花形企業に、こんな「流刑」があったのかと憤りを抑えることができませんでした。そこから『沈まぬ太陽』が生まれたんです。



この小説は、そんな経緯で生まれたんですね。
対談も興味深いながらも本書では壮大なアフリカの大地が描かれています。
恩地がハンターとして狩りをする様子、特にライオンとの戦いは圧倒されました。

最後にタイトルに込められた思いを語っています。


現在の荒廃した社会にあっても、良心は消えない。"明日を約束する"心の中の「沈まぬ太陽」を持ち続けようとする願いが、この小説のテーマです。



明日を約束する沈まぬ太陽。
素敵な言葉ですね。
理不尽な環境におかれても希望を持ち続けること。
生きていく糧になりそうです。


『沈まぬ太陽』(2)のレビューに続きます。
*御巣鷹山篇* (2)



御巣鷹山で起きた飛行機事故を扱っていました。言葉がでないほどの壮絶な様子が伝わってきます。

関連記事

拍手頂けると励みになります(*^^)


この記事を書いた人って、どんな人?
ひだまりさん。のプロフィールページ

山崎豊子, 国民航空, WOWOWドラマ,

0 Comments

Add your comment