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『夜行』森見登美彦/永遠に続く夜と、ただ一度きりの朝

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

読書感想ブログです。たまにネタバレするかもしれません。ホームベーカリーGOPANのレシピも扱っています。


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『夜行』森見登美彦/永遠に続く夜と、ただ一度きりの朝 

森見登美彦さん
『夜行』

世界はつねに夜なのよ





あらすじ&感想


僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!  

森見さんの本、初めて読みました。
表紙が可愛く恋愛ものなのかな?と勝手に思ってましたが、全然違いました・・・。
ファンタジー・ホラーですね。

これは、面白い!!
ずーっと不思議な感覚が抜けなくて、読み終わってからもその余韻に浸っていました。
森見さんが描く、もう一つの世界。
それがすごいです。


森見登美彦さん
『夜行』のレビュー


ホラーと幻想的な世界観


『夜行』というタイトルから、何を想像するでしょうか?

「夜行列車」。
まず頭に思い浮かんだものです。
・・・というか、それしか浮かばなかったのですが。


「夜行」とは夜行列車の夜行であるかもしれず、百鬼夜行の夜行であるかもしれぬ。



本の帯に書かれていたものです。
百鬼夜行?

(ひゃっきやぎょう、ひゃっきやこう)とは、日本の説話などに登場する深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れ、および、彼らの行進である。
―Wikipediaより

・・・怖い。
ホラー感、満載じゃないですか。
確かにこの本、怖いんです。
でもそれよりも、不思議な世界観が印象に残りました。
たぶん、その幻想的な世界観に魅了される人が多いのではないかと思います。
私もその1人です。





なぞの銅版画


この物語は、5人の登場人物によって語られるお話になっています。
鞍馬の火祭りの夜に、長谷川さんが姿を消してから10年。
もう一度 鞍馬に集まった彼ら(中井さん、武田君、藤村さん、田辺さん、大橋さん)は、それぞれの旅の思い出を語ります。

【目次】・・・
第一夜「尾道」、第二夜「奥飛騨」、第三夜「津軽」、第四夜「天竜峡」、最終夜「鞍馬」

そして彼らの旅の思い出には、ある絵画が出てきます。
岸田道生、連作銅版画「夜行」です。
全部で四八作あるという絵。


天鵞絨のような黒の背景に白い濃淡だけで描きだされた風景は、永遠に続く夜を思わせた。いずれの作品にもひとりの女性が描かれている。目も口もなく、滑らかな白いマネキンのような顔を傾けている女性たち。



不思議な絵画です。
夜が永遠に続いている。


岸田さんは日が昇る前に眠って日が沈んでから起きるという生活を続けてたの。友人たちと会うのも夜だけだった。彼は連続する夜の世界で暮らしていて、そこで見えた風景を作品にしていた



この版画が、本書で起こる出来事に関係しているようなのですが・・・。


何が起こっても不思議ではない「夜」


この物語では「夜」がキーワードになっています。


世界はつねに夜なのよ



長谷川さんが消えた火祭りの夜。
5人が語る旅先での奇妙な出来事。
まるで、どこかに存在している別の世界に紛れ込んだかのような感覚です。

「夜」って不思議な感じがします。
上手く言えないのですが、何が起こっても不思議ではない感覚。
たまに夜中にカーテンの隙間から外を見てみたりします。
街灯がほのかに路上をてらしていて、だれも歩いていない道路。
雪が積もっていて真っ白な世界。
音も何もなく、世界が切り取られたかのような、私ひとり取り残されたような心もとなさを感じたり。
たまに車が通るとホッと息をしたりします。
でも夜更かしの私は、そんな静かなひとときに少しの安らぎを感じたりもするのですが。

この本を読んでいると、知らずのうちに知らない世界に足を踏み入れているような心地になります。
元いた世界から私は消えているかもしれないけれど、違う世界でちゃんと生活していて。
でも私にとっては今いる場所が本当の世界です。
パラレルワールドみたいですね。
それをちょっぴり怖くミステリータッチで描いたのが本書です。





「夜行」と「曙光」


第四夜「天竜峡」で、前々から噂されていた岸田道生の作品「曙光」の話になります。


「曙光」は「夜行」と対をなす連作らしかった。「夜行」が永遠の夜を描いた作品であるとすれば、「曙光」はただ一度きりの朝を描いた作品だ



対をなす朝を描いた「曙光」。
「夜行」も見てみたいけど「曙光」も見てみたい。
絵画は、見るだけでそこに描かれている物語が見えてきますが、2つを描いた岸田道生の作品が気になりました。
深い夜の世界と、ただ一度きりの朝。
この本の世界観が描かれている版画です。


旅の終わりに僕が見たもの


彼女はまだ、あの夜の中にいる

主人公は、大橋さんということになるのかな。
彼が最終夜で見たものとは?
どんでん返しっぽい結末でした。
この世界には私の知らない世界がたくさんあって・・・などと想像が膨らみます。
何が真実で、何が真実じゃないのか。
そんなことは関係がなくて、読む人の分だけ物語があるんだなと思うラスト。

そして私がいる世界には夜があり、ちゃんと朝がやってくる。
夜がミステリータッチで描かれていたからか、その事実があるだけでホッとする自分がいました。



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この記事を書いた人って、どんな人?
パラレルワールド, ファンタジー, ホラー,

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