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『殺人症候群』貫井徳郎/「犯罪症候群」原作 / 復讐は正義か悪か

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

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『殺人症候群』貫井徳郎/「犯罪症候群」原作 / 復讐は正義か悪か 

貫井徳郎さん
『殺人症候群』
ドラマ「犯罪症候群 season2」原作

復讐は悪なのか―





あらすじ&感想


殺人を他人から依頼されて代行する者がいるかもしれない。警視庁の環敬吾は特殊工作チームのメンバーを集め、複数の死亡事件の陰に殺し屋の存在がないか探れと命ずる。事件の被害者はみな、かつて人を死に至らしめながらも、未成年であることや精神障害を理由に、法による処罰を免れたという共通点があった―愛する者を殺されて、自らの手で復讐することは是か非か。社会性の強いテーマとエンターテインメントが融合した「症候群三部作」の掉尾を飾る傑作!
―「BOOK」データベースより―

「失踪」「誘拐」「殺人」、症候群シリーズ3作目にて完結編です。
東海テレビ×WOWOW 共同制作ドラマの原作。
今、season1をやっていますよね。
こちらを原作とする「犯罪症候群 シーズン2」は、6月にWOWOWで放送予定です。
完結編の本作が1番読み応えありました。
そして後味の悪さも逸品です。

確かにある意味、傑作!!
シリーズの中では1番面白いと言われ、群れを抜いている。
3冊読んだひだまりさん。も、それには頷けました。
だけど全く救いのないラストに、読後感は果てしなく悪い・・・。
その理由からレビューの評価は割れているようです。
これがドラマになるのか・・・と思うと、心にズシンと重りをつけられたような気分になりました。

※ 少しだけネタバレありますのでご注意ください。

* 前作のレビュー
『誘拐症候群』


貫井徳郎さん
『殺人症候群』のレビュー


問われる復讐の是非


この本のテーマは、復讐の是非です。
それを考えるなら軽い話ではないと容易に想像がつくのですが、ここまで救いがないとは・・・。
ここで問題になっているのは、少年法や、心神喪失者は罰しないという法律の壁。
・・・反省していればいいんです。
でも少年たちは、反省も何もしていない。


人ひとりを殺して、反省もせず、罪も償わず、したいことをして生きていけるなんて、そんな理不尽なことがあっていいんでしょうか。



子供を少年によって殺された梶原のことばが心に重く響きます。
被害者の家族たちの苦しむ姿と、反省もせずにのうのうと生きている加害者の姿。
なんとも理不尽だなと思います。
それが復讐へと駆りたてる。

前に読んだ小林由香さんの『ジャッジメント』を思い出しました。
復讐が法律で認められていて、重く苦しいお話。
それを実行するのにもエネルギーがいる。
『殺人症候群』では、遺族の代わりに復讐を代行してくれる職業殺人者が描かれています。





職業殺人者は正義か


環の元に集められた、私立探偵の原田、托鉢僧の武藤、肉体労働者の倉持。


「もしこれらが天意などでないとするなら、依頼によって殺人を代行する人物がいると考えざるを得ないでしょうね」



殺人を代行する人物、職業殺人者とは・・・?


・・・実はこの小説、職業殺人者なる人物が最初の方で判明するんですよね。
犯罪被害者である響子と渉です。
彼らの視点、彼らを追う環チームの視点など、様々な登場人物の視点で描かれています。
復讐を正義だと思う響子と、実行犯の渉。
2人は遺族のためにそれを決行していく。
もう後戻りはできない地獄への道です。

でも最後の方では、2人の心がすれ違ってしまう・・・。


おれたちのしていることは正義なんかじゃない。ただの人殺しだ



響子には共感ができなかった ひだまりさん。
やっぱり復讐はイケナイ・・・。
渉のことばに強く頷いてしまいましたが、少年法や心神喪失者は罰しないという法律には、なんとなくモヤモヤした気持ちになったり。
難しいですよね。
必ずしも法律は万全ではないから。


恐ろしい症候群


『殺人症候群』・・・なんて、ちょっと怖いタイトルだなと思ったのですが、この本にはぴったりきます。
他にも殺人が描かれているんですよね。
心臓移植を待ち望む息子のために、人を殺めていく母、和子。
狂っている・・・と思いましたが、和子の視点でも描かれているから、その苦しい心情に胸が痛みました。
その事件を追う鏑木刑事。

ドラマ「犯罪症候群 season2」では、この鏑木刑事が主演です。
谷原章介さんが演じられるようですね。
ドラマでは、鏑木護・・・。
原作と同じであれば、彼もまた復讐という地獄にどっぷりとハマっていることになります。
実はこの鏑木が曲者でした。
すっかり騙された、ひだまりさん。
小説ってこういう騙しもできるから面白い。
たぶんドラマでは味わえない醍醐味だなと思います。
・・・なんて言うんですか、叙述トリック?

あっちでもこっちでも、殺人。
まさに症候群です。
・・・恐ろしい。





明かされる倉持の過去


『失踪~』では原田の過去が明らかになり、『誘拐~』では武藤の過去が、そして環チーム残るは倉持ひとりとなりました。
完結編では倉持の暗い過去が明らかになります。
・・・環は最後まで謎のままでした。

環の元に集まったとき、倉持真栄はこの件から降りました。
彼もまた、犯罪被害者遺族だったんです。
過去に妻子を殺されて、でも加害者は罰を受けずに不起訴・・・。
やがて自殺します。
彼の怒りは宙ぶらりんのまま・・・。
環の指令を降りたはずなのに、原田と武藤が追っている職業殺人者の近くに姿を現す倉持。
彼はいったい何を考えているのか?
ここにも復讐の是非が問われます。

それにしても、最後に環チームがバラバラになってしまったのには残念でした。
前作『誘拐~』では環と武藤の間に亀裂がはしり、大丈夫かぁー、と心配していましたが、倉持の1件で見事にバラバラになってしまいます。
チーム環、解散・・・。


後味の悪い結末と復讐の末路


復讐の是非を問うている小説ですが、彼らの末路が悲惨すぎました。


他人の命を手にかけた者に、幸福な末路などあり得ない。



まさに、この言葉どおりです。
かなり後味の悪い結末。
でもこの言葉は、私もそのとおりだと思います。
幸せな末路なんて訪れるわけがない。
唯一の救いは、和子の息子の移植でしょうか。
たとえ息子のためだろうが何人もの人を殺めた和子や、職業殺人者の響子と渉の末路を思うと、復讐が正義であるわけがないということに思い至ります。

かなりの衝撃作でした。



こちらもどうぞ。
小林由香さん『ジャッジメント』



「復讐法」が定められた世界。
もしそんな法律があったら、どうしますか?
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症候群シリーズ, WOWOWドラマ, 復讐,

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