Welcome to my blog

『リトル ターン』ブルック・ニューマン(絵本)/挫折をのりこえて

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

読書感想ブログです。たまにネタバレするかもしれません。ホームベーカリーGOPANのレシピも扱っています。


Total:
現在:

 『リトル ターン』ブルック・ニューマン(絵本)/挫折をのりこえて

『リトルターン』
Little Tern

きみは飛ぶ能力を失ったんじゃない。
ただどこかに置き忘れただけだ


ブルック・ニューマン 作
五木寛之 訳
リサ・ダークス 絵





あらすじ&感想


ぼくは飛べなくなった鳥。すべては失われた。今までの生き方は残っていない。ぼくは、もう鳥じゃないの? 仲間たちとはなれて、ぼくのひとりぼっちの旅が始まった…。現代に新しく飛び立つリトルターン(コアジサシ)の物語。


優しい水彩画で描かれた絵に、詩的な言葉が書かれています。
その水彩画の色合いがとても綺麗で魅入ってしまいました。
でもこの絵本は、言うなれば「挫折」を描いたものなんです。
今日レビューと交えて紹介するのは、大人向け絵本です。
そこにはハッとするような言葉がありました。


空を飛べなくなった鳥


この本の主人公は1羽の鳥です。
「リトル ターン」って可愛らしいタイトルだなと思ったのですが、コアジサシっていう鳥のことだったんですね。

コアジサシ・・・
チドリ目カモメ科。
海岸や川などの水辺にいて、狙いをつけ、水にダイビングして魚をとらえる。その様子から名前がつけられたと言われています。


聞いたことがなく、馴染みのない鳥でした。


アジサシという鳥の真の本質は、思うがままに空を飛翔する能力にあり、また、惑星のかなたに描かれた見えない真理を悟る直感力をもつ点にある



そんなコアジサシが突然 空を飛べなくなってしまいます。
空の世界で生きてきた彼の生活は、その時を堺に逆転してしまうのです。





大きな挫折に直面したとき、私だったらどうするだろう。
目の前が真っ暗になり打ちひしがれてしまいます。
ショックが大きく信じられない気持ちで、しばらく放心しちゃうかもしれません。
この絵本の主人公もそうでした。
今までの友達も失い、全く未知の世界 (陸上) で生きていかなければなりません。

でも徐々に変わっていくんです。
そこにはゴースト・クラブ(幽霊ガニ)との出会いがあり、空を飛んでいただけでは見えなかったものがありました。
それに気づいた時、コアジサシは大きく生まれ変わります。
その過程が心に響く。
たぶんこの絵本は、今 挫折の真っ最中にいる人が読むと立ち直る手助けをしてくれそうです。
でもそれには想像力が少し必要かもしれません。


想像力で読む世界


この物語の解釈は10人がいたら10人分の解釈がありそうです。
十人十色。
「想像力」 で読む本とでも言いましょうか。
翻訳をされた五木さんは、あとがきでこう述べています。


これは奇妙な物語である。やさしいお話のようで難しく、わかるようでわからないところがある。


―でも妙に心惹かれるところがある、と。

そうなんです。
私も解釈に戸惑いました。
でも心に響いた部分があって。
その部分を少し書いていきたいと思います。


置き忘れられた影


コアジサシは陸で生活していくうちに、様々なモノに出会います。
一輪の花、蝶、そしてゴースト・クラブ。


きみは飛ぶ能力を失ったんじゃない。ただどこかに置き忘れただけだ



「どこかに置き忘れただけ」
このゴースト・クラブの言葉は、束の間の安堵を与えてくれます。
能力を失ってしまったらもうどうしようもないけれど、「置き忘れただけ」ならまた飛べるかもしれません。





見えていなかったもの


ある時主人公は、
「存在しているのに見えていなかったもの」に気付きます。
それはです。


以前から影はあったのだろうけれど、その朝まで、そんなことにぼくは気づいたことがなかったのだ。



今まで何も考えずに空を飛んでいた彼は、陸で暮らすようになって自分の影を発見するのです。


この影はずっとそこにあったのだから。きっと失われていたのではなく、ただ、置き忘れられていたのだ。



陸で暮らさなかったら、その存在に気付くことは永遠になかったかもしれません。
挫折をして初めて気付く事実。
それはコアジサシにとって、とても凄い大発見だったようです。

挫折をするのは誰だって嫌です。
でもそれで初めて気付くこともあって。
それは、「今まで自分には見えていなかったもの」です。
それに気づけるか、気づけないかで人生は大きく変わるのでしょうね。


鳥は、その羽や翼がどれほど価値があり素晴らしいかを知らなければ、本当に飛ぶことはできないのだ。



当たり前のように空を飛んでいた時は、羽や翼の価値なんか考えたことがなかったのでしょう。
でも飛べなくなって「影」を発見したように、存在するものの価値や素晴らしさが身に染みました。
見えなかったものの価値が見えた瞬間。
彼は本当の意味で「飛ぶ」ことが出来たのです。

この絵本は、今、必死にもがいている人に送りたい一冊です。


関連記事

この記事を書いた人って、どんな人?
絵本, ,

0 Comments

Add your comment