『ひとめあなたに・・・』新井素子 /【感想】地球最後の1週間!? ひとめあなたに会いたくて。

ひとめあなたに、会いたくて。

新井素子さん『ひとめあなたに・・・』。
先日、Twitter を眺めていたら久々に読みたくなった小説でした。・・・ちょうど手元にあった! ので再読して記事をリライトしました。

少しだけネタバレあります。

Twitterで新井素子さんトレンド入り!?

この記事、先日やけに検索流入が多かったんですが、Twitter で新井素子さんがトレンド入りしていました。

NHK番組『おかあさんといっしょ』の11代目、だいすけお兄さんが歌っている「あたし おかあさんだから」の歌詞から、新井素子さんの小説を連想した人が続出!!

確かに。"あたし" という言葉や歌詞の雰囲気から、彼女の小説『おしまいの日』『ひとめあなたに・・・』を連想してしまうのがわかるかも。でもまさかトレンド入りするとは、本人も思ってなかったでしょうね。・・・そんなワケで、久々に新井さんの小説を読みました。

『ひとめあなたに・・・』評価&あらすじ

地球最後の1週間!? どう過ごす?

『ひとめあなたに・・・』 オススメ度 : 感動 : 意外さ : 読みやすさ :

【あらすじ】
女子大生の圭子は最愛の恋人から突然の別れを告げられる。自分は癌で余命いくばくもないのだと。茫然自失する圭子の耳にさらにこんな報道が―“地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない”。彼女は決意した。もう一度だけ彼に会いに行こう。練馬から鎌倉をめざして徒歩で旅に出た彼女が遭遇する4つの物語。来週地球が滅びるとしたら、あなたはどうやって過ごしますか。―「BOOK」データベースより―

新井素子さんの衝撃作 (・・・と私は勝手に思っています)。一人称の独特な文章は好き嫌いは分かれるかもしれません。読みにくさを感じます。でも1度よんだら忘れられない衝撃。最後は感動も・・・。

『ひとめあなたに・・・』感想

『ひとめあなたに・・・』は、ひだまりさん。大好きな1冊なんです。

隕石が地球にぶつかって滅びるまでの1週間。SF なのですが、これはホラーです。でもほんの少しだけラブ・ストーリー。

初めて読んだのは学生のころでした。

そして衝撃を受けます。後ほどレビューを書きますが、「チャイニーズスープ」 の章がインパクト強すぎます。松任谷由実 (当時は荒井由実) さんの 「チャイニーズスープ」 という曲を聞くと、だれもが間違いなく『ひとめあなたに・・・』を思い出してしまうだろう・・・くらいに。

シチューの日は 読んではいけません!!

美味しく食べられなくなると思います。・・・お気をつけ下さい。

地球最後の1週間!?

地球に隕石がぶつかる。設定は紛れもなくSFです。ですが、隕石を避けるための対策だとか科学的な要素は皆無です。・・・設定だけSFなんです。あとはホラーとラブが少しだけ。

もしも地球が滅びるとしたら、最後までの1週間をどう過ごすのか。

テーマをひとことで言うと、"生きる意味" を様々な人たちを通して見つめ直すこと、、、ではないかと思いました。(・・・それについて感じたことは一番最後にまとめたいと思います!)

主人公・圭子 (ケイコ) は、別れを告げられた恋人・朗 (ロウ) の元へ走ります。練馬から鎌倉まで。その道すがら様々な人たちと出会うのですが・・・。本書は、圭子の視点、彼女たちの視点と交互に描かれています。

【目次】 練馬 圭子―出発 世田谷 由利子―あなたの為にチャイニーズスープ 練馬―世田谷 圭子 目黒 真理―走る女 世田谷―目黒 圭子 新横浜 智子―夢を見たのはどちらでしょう 目黒―新横浜 圭子 西鎌倉 恭子―聖母像 新横浜―西鎌倉 圭子 西鎌倉―そして湘南 圭子―ひとめあなたに・・・

そこで出会う彼女たちがみんな狂っていてホラーなんです。

登場人物

  • お人形さんみたいな由利子
  • ただひたすらレールの上を走る真理
  • 現実逃避をしている智子
  • 若くして子供を宿した恭子

1週間後に地球が滅びてしまうのだから、この展開は致し方ない?・・・では割り切れない恐怖にギョっとしました。全部のレビューを書きたいところですが、1番恐ろしかった由利子と、心に引っかかった真理にスポットを当ててみたいと思います。

あなたの為にチャイニーズスープ

1番の怖さはこの章にあると言っても過言ではありません。

圭子が最初に出会う人物、、、純日本人形風の由利子です。

あなたはわたしのお腹の中で、にんじんと一緒にとろけるの。そして、感じて。わたしの心臓の音を。そして、感じて。私の愛情......。

この文章、何を意味しているかわかりますか? 由利子が夫の好きなシチューを作っているシーンです。でも何かがおかしい。由利子の夫・明広には愛人がいて、その愛人に会いに行こうとしたら・・・。極端なネタバレは避けますが、今 想像された通りです。

新井素子さんの文章は独特で読みづらくもありますが、描写がとても怖いんです。

引用したものはまだ序の口で、解体シーンなんかは読んでいるとゾッとします。狂った由利子を見ていると可哀想にもなりますが、やはり怖さが勝ってしまう。

本書にも出てくる松任谷由実さんの 「チャイニーズスープ」 という曲の歌詞にこんな文章があります。

煮込んでしまえば形もなくなる もうすぐ出来上がり あなたのために Chinese soup 今夜のスープは Chinese soup

この曲を聞いていると、必ず『ひとめあなたに・・・』の由利子を思い出すんです。

煮込んでしまえば形もなくなる もうすぐ出来上がり

・・・いったい、なにが出来上がるというの?

走る女

もう1人、圭子が出会う女の子にスポットを当てたいと思います。

「走る女」 に登場する彼女の名前は真理、大学受験勉強に勤しむ女子高生です。読んでいて絶句してしまったひだまりさん。・・・彼女は 地球が滅びると知っても勉強をやめませんでした。

なぜ? 受験はもうできないのに。

彼女には他にやりたいことが何もなかったんですよね。レールの上をただひたすら走り続けるしかないんです。こうなってしまったのには理由があって、母にコンプレックスを抱いているのですが、それは書かないでおきますね。

走りだしちゃったから。加速がついちゃったから、今更とまんないの。今更とめられないのよ。

あと1週間しかないというのに何もやりたいことがなくて、今さら意味のない受験勉強をし続けるしかない彼女を、可哀想だと思うのは当然の感情です。でも、彼女が言ったひとことに衝撃が走りました。

「そうよ。あたしは、しあわせなの」

真理は、もしも このまま地球が滅びることがなかったら、走り続けられなくなってしまうことに恐怖を感じていたんです。良い小学校に入るために勉強して、今度は中学受験、高校受験、大学受験。

・・・でも大学に受かってしまったら、その先は?

考えなくてすむから、大学に受かる前に人生が終わることになってホッとている。・・・やっぱり、彼女もどこか狂っています。ちょっと切なくもありますが。

幸せと不幸は紙一重

『ひとめあなたに・・・』は、ある種の狂気が描れています。

幸せと不幸です。それは 紙一重なんだなと思いました。

彼女たち (正気を失った人たち) は、みんな最後は幸せそうなんです。正気じゃない彼女たちと接した圭子が、恋人の朗に言ったことばが印象的でした。

途中、何度も、狂いたくなった。いっそ、狂っちゃった方が、どんなに楽だろうって思った。

この言葉どおり、狂ってしまった方が楽 (幸せ) なのかもしれません。由利子や真理や、その他の人たちのように・・・。でも彼女たちを見ていると、一旦狂ってしまったらそこから抜け出せなくなる・・・という怖さも感じます。こんな世界では正気を保つ方が難しい。

ほんの少しだけ、大姫という人を思いました。

鎌倉時代に生きて、父親に殺された義高をずっと想い続けた人です。薄幸の人と言われているけれど、彼女の中では幸せな人生だったのかもしれません。

幸不幸なんて、結局はその人自身が決めることです。他人が決められるものではない。

・・・そうは思うのですが、ここに登場する由利子や真理たちを見てるとやっぱり否定したくなってしまいます。彼女たちは 幸せなんかじゃないと。

生きる意味

地球が滅びる = 死です。

主人公と一緒に、死を目前にして狂う人たちを見てきました。でも人は産まれたときから、実はもう死への道を歩んでいるんだよねと、ふと考えてしまいました。わかってはいたけど、あまり意識しないようにしていたことです。

ゴールは死、でも生きることに意味はある。

鎌倉にいる恋人の朗に会ったときに、圭子と一緒に私も感じました。

今まで生きてきた中でたくさんの大切な人やモノたちに出会えたこと。それによって感じた喜び。

そういうのって、かけがえのない大切なものです。それに気づいて、初めて生きる意味を見いだせるのかもしれません。・・・真理にもそれを分からせてあげたかったなと思いました。

新井素子さんの本、そんなに数多く読んでいるわけではないのですが、以前に読みました『チグリス・ユーフラテス』も 生きる意味を問うていました。

『チグリスとユーフラテス』新井素子 /【感想】生きることの意味を考える - 新井 素子

新井素子さん『チグリスとユーフラテス』―私はなぜ生まれたんだろう。生きることに意味はあるのだろうか学生時代、新井素子さんの小説が好きでよく読ん...

なんか永遠のテーマですね。

ひとめあなたに、会いたくて。

圭子の恋人を想う強い気持ちが、彼女を狂わせることなく鎌倉へと導いたんだなと思うと、心が温まりました。初めて読んだときは、「チャイニーズスープ」 の衝撃が大きすぎて恐怖しか残らなかったけど、実は心温まるお話だったんですよね。

関連記事

コメント 0

There are no comments yet.

コメントを残す

あ行の作家 (79)
相場 英雄 (1)
青山 美智子 (1)
朝井 リョウ (1)
浅田 次郎 (1)
麻野 涼 (1)
麻見 和史 (2)
芦沢 央 (1)
彩坂 美月 (1)
綾辻 行人 (2)
新井 素子 (3)
有川 浩 (1)
安房 直子(童話) (16)
伊岡 瞬 (1)
池井戸 潤 (3)
伊坂 幸太郎 (2)
石川 智健 (1)
石田 衣良 (1)
伊藤 計劃 (2)
乾 くるみ (2)
岩木 一麻 (1)
上田 早夕里 (5)
冲方 丁 (1)
江國 香織 (9)
岡嶋 二人 (1)
小川 洋子 (1)
奥田 英郎 (1)
乙一 (2)
恩田 陸 (8)
あ行の作家 その他 (7)
か行の作家 (29)
海堂 尊 (1)
川村 元気 (1)
貴志 祐介 (9)
北川 恵海 (1)
北村 薫 (2)
清武 英利 (2)
倉本 由布 (2)
小林 由香 (2)
近藤 麻里恵(こんまりさん) (1)
今野 敏 (8)
さ行の作家 (15)
佐伯 和人 (1)
佐々木 譲 (6)
時雨沢 恵一 (1)
重松 清 (1)
雫井 脩介 (1)
下村 敦史 (2)
宿野 かほる (1)
翔田 寛 (1)
住野 よる (1)
た行の作家 (29)
大門 剛明 (1)
高田 大介 (3)
高畑 京一郎 (2)
高野 和明 (1)
谷川俊太郎 (3)
知念 実希人 (1)
辻堂 ゆめ (1)
辻村 深月 (8)
筒井 康隆 (4)
恒川 光太郎 (3)
堂場 瞬一 (2)
な行の作家 (27)
中山 七里 (10)
長崎 尚志 (1)
長沢 樹 (1)
長野 まゆみ (5)
夏川 草介 (5)
成田 名璃子 (1)
貫井 徳郎 (3)
ねじめ 正一 (1)
は行の作家 (54)
畑野 智美 (2)
羽田 圭介 (1)
帚木 蓬生 (4)
浜口 倫太郎 (1)
原田 マハ (11)
早見 和真 (1)
東野 圭吾 (26)
百田 尚樹 (1)
古谷田 奈月 (1)
星 新一 (3)
誉田 哲也 (1)
は行の作家 その他 (2)
ま行の作家 (41)
前川 裕 (1)
又吉 直樹 (ピース又吉) (1)
まど・みちお ( 詩集 ) (2)
真梨 幸子 (2)
三浦 しをん (1)
三島 由紀夫 (1)
道尾 秀介 (11)
湊 かなえ (2)
宮下 奈都 (1)
宮部 みゆき (8)
向田 邦子 (1)
村上 春樹 (2)
村山 早紀 (1)
村山 由佳 (1)
森 絵都 (3)
森 博嗣 (1)
森見 登美彦 (1)
ま行の作家 その他 (1)
や行の作家 (29)
薬丸 岳 (13)
柳 広司 (1)
山崎 豊子 (3)
山田 詠美 (1)
柚木 麻子 (1)
柚月 裕子 (1)
吉野 源三郎 (1)
米澤 穂信 (8)
海外の作家 (5)
SF (4)
ファンタジー (1)
絵本 (57)
佐野 洋子 (2)
刀根 里衣 (13)
藤城 清治 (4)
ロブ・ゴンサルヴェス (4)
クリスマスおすすめ絵本 (8)
大人にもおすすめ絵本 (26)
山本くんガチャ・その他の本 (21)
100万分の1回のねこ (13)
山本くん ガチャ (5)
その他の本 (3)
教科書の名作・古典 (7)
教科書の名作 (4)
平家物語・百人一首 (3)
映画・ドラマ・アニメなど (22)
三谷幸喜 (3)
ドラマ・映画 (12)
アニメ・漫画 (7)
GOPANレシピ・雑記・ゲームなど (37)
gopanレシピ (11)
ルピシアの紅茶 (2)
Twitter・ゲームなど (8)
雑記 (15)
ひだまりさん。面白かった本 (3)
ひだまりさん。とブログについて (10)