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『錆びた太陽』恩田陸/シュールな未来と人間のようなロボット

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

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『錆びた太陽』恩田陸/シュールな未来と人間のようなロボット 

恩田陸さん
『錆びた太陽』

原発事故で汚染された地域を巡回する
ロボットたち。彼らのもとに、
ある日、謎の女が現れた。


あらすじ&感想


「最後の事故」で、人間が立ち入れなくなった地域をパトロールしているロボット「ウルトラ・エイト」。 彼らの居住区に、ある日、人間が現れた。 国税庁から来たという20代の女性・財護徳子。 人間である彼女の命令に従わざるを得ないロボットたち……。 彼女の目的は一体何なのか? 恩田陸の想像力が炸裂する本格長編小説。

恩田さんの描く世界観がシュール。
面白く、一気に読んでしまいました。
やっぱり好きだな、恩田作品。

彼女の本をよむのは、直木賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』以来です。
受賞作は文句ナシに面白かった。
たぶん万人受けする作品なんじゃないかなと思います。
『錆びた太陽』は、ひょっとしたら好き嫌いがわかれるかもしれません。
でも私、こうゆうの大好き。
キャラにアクがあり、ヒヤリとする怖さがあり、ユーモアもある。
恩田さんらしさがつまった一冊でした。

恩田陸さん『錆びた太陽』のレビュー

シュールな未来


私が買った本には初回限定で、恩田さんの一筆が書かれたハガキがついていました。
そこにはこんな言葉が・・・。

私たちは、こんにち、とても不条理で嘘臭くて、もはや笑い飛ばすしかない世界に生きている。この二人がどんな会話を交わすのか、二人が何をするのか、皆さんに目撃していただき、自分たちがどんな世界にいるのか体感していただければ幸いである。


舞台は未来の日本です。
原発が破壊され汚染された制限区域。
まさに「不条理で嘘くさくて、もはや笑い飛ばすしかない世界」。
そこには青玉とよばれる爆弾がゴロゴロと転がっていたり、しっぽが9つもある巨大な猫がいたり、極めつけはゾンビまでいたりします。
なんとまあ、恐ろしい。
でも恩田さんの描き方がうまいから、すんなり物語に入っていけました。
体感できちゃうんですよね、登場人物たちと一緒にその世界観を。
さすがだなと思います。


「ウルトラエイト」と財護 徳子


恩田さんの本を読むと毎回おもうのが、キャラが面白い!!ということです。
好きになるキャラが必ず1人はいます。
今回もおもしろキャラが満載でした。
まずは、ウルトラエイトのロボットたち。

・ボス・・・角刈り
・マカロニ・・・肩までの長髪
・ジーパン・・・パンチパーマ
・デンカ・・・七三分け
・ヤマ・・・リーゼント
・ゴリ・・・スキンヘッド
・チョー・・・三つ編み

同じ顔をした屈強な7人の男たちです。
髪型で区別しているようですね。
リーダーは、角刈りのボス。
恩田さんのハガキに書かれていた「二人」とは、ボスともう1人、財護徳子を指しているのだと思います。
ゾンビも逃げ出す女、財護徳子です。
彼女は、国税庁の人間でした。
この2人のやり取りが面白い。
そこに恩田さんのユーモアがあふれています。
それから私が注目した人物が、デンカ。
屈強な男なのに、なぜか女ことばで話す彼。
『MAZE』の神原恵弥を連想してしまいました。

ところで、彼らはウルトラエイトなのに7人しかいません。
実はもう1人いたようなのです。
シンコというロボが。
行方不明の彼はどこへ行ってしまったのか?
そして謎な人物、財護徳子の目的とは?
恩田さんらしく、小さな謎がたくさん描かれています。

マルピー VS ロボット


『錆びた太陽』では、なんとゾンビまで出てきちゃいます。

フロントグラスの上に、さかさまの人間の顔が―いや、それは、噂では聞いていたが、直に見るのは初めての顔―青ざめ、ひび割れた顔の、むきだしになった二つの目―そう、ずっと前よりいわゆる「ゾンビ」と呼ばれてきた者の顔が、無表情に車の中の彼らをみつめていた


かなり怖い描写なんですけど。
かつては人であった彼ら。
マルピーと呼ばれています。
そして、ウルトラエイトたちと対立します。
でもマルピーの中にも話が通じるゾンビがいて、それが、九十九生命科学研究所の湯川博士。
この辺り、怖くてドキドキしながらも読むのをやめられませんでした。
そして浮かび上がる、ある計画・・・。


護美箱計画


人間の上層部の一部が画策している計画がありました。
その名も護美箱計画です。

GOMIBAKO-PLAN。ゴミ箱の当て字のひとつに、護美箱という表記がある。世界を美しく保つためには、護美箱が必要だというわけだ。


すごい当て字・・・。
原発が爆破されて汚染された世界観もシュールだけど、この計画もあ然としてしまうものでした。
人間の一部の人が考える、世界を美しく保つために必要なゴミ箱。
その箱に入れるものとは?

弱い人間と、人間のようなロボ


この小説を読んでいて面白いなと思ったのは、ウルトラエイトのロボットたちが理想の人間のように思えること。
そして、心を持つ人間の弱さが浮きぼりにされていることにドキリとしました。

護美箱計画とマルピーの襲撃を知って、ボスは未だかつてないほどの大きな決断に迫られます。
人間の上司に判断を委ねるか、否か。

「ボスさんが、今回のケースの状況判断をあなたの上司に委ねたとします。あなたは、あなたの上司である人間が、正しく判断できると思いますか?」


この徳子の言葉にドキリとしました。
そうなんですよね。
精神的にも不安定で利己的であり、しばしば過ちを犯す人間に正しい判断ができるのか?
目先のことしか考えない人間の弱さが、護美箱計画なんて無謀でむちゃくちゃなものを実行しようとする。

それに対して心を持たないロボットは、人間の安全を第1に考え、合理的に物事を解決しようと試みる。
・・・なんだかなぁ、人間って弱くてダメダメな感じがします。
心を持たないロボットたちの方が優秀。
よっぽど理想とする人間像に近いように思える。
ちょっと複雑な気分になりました。

最後はたくさんの謎も解決されてスッキリです。
ロボットのキャラも面白かったし、財護徳子も良い味だしてました。
でも青玉がゴロゴロ転がっているわ、ゾンビがいるわ、巨大な猫もいるわ・・・。
こんな世界は想像しただけで恐ろしいです。


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