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ジェンダーを描いた『片想い』東野圭吾 / 悲しき結末とメビウスの帯

*ひだまりさん日記* ~晴れ 時々 読書とパン~

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ジェンダーを描いた『片想い』東野圭吾 / 悲しき結末とメビウスの帯 

東野圭吾さん
『片想い』

オレは男だったんだ。
ずっと前から。


あらすじ&感想


あらすじ

十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。
―「BOOK」データベースより―

WOWOWドラマ化されるんですね。
読んだのかなり昔だったから記憶が曖昧でした ^_^;

東野圭吾さん、社会テーマを扱うと逸品ですね。

さすがです。
ミステリーだけど、それよりもそっちの方に重きを置いた作品。
本作のテーマはズバリ、ジェンダーです。

※ ネタバレはさけますが、本の内容にふれますのでご注意ください。

東野圭吾さん
『片想い』のレビュー

そもそもジェンダーって何?


昔に比べると最近では耳にするようになったジェンダーという言葉。
検索するとこんな感じの意味合いで出てきます。

ジェンダーとは、ある社会において、生物学的男性ないし女性にとってふさわしいと考えられている役割・思考・行動・表象全般を指す。男性にとっては男らしさであり、女性にとっては女らしさである。
―Wikipediaより引用

男らしさや女らしさ。
昔は男女差別が当たり前でしたが、最近では徐々にそれも無くなっていますよね。

でも、

男らしくとか女らしくとか言うけど、その境界線ってどこなの?

・・・と、思いませんか?
本書を読んでいるとそれは曖昧で、境界線などないんだなということに気づくんです。


美月の告白と苦しみ


物語は、帝都大アメリカンフットボール部 出身だった仲間たちを主軸に進んでいきます。
主人公の哲朗
哲朗の妻であり、元女子マネージャーの理沙子
同じく女子マネの日浦美月
大学時代の美月の恋人、中尾功輔
現在 新聞記者の早田
ちょいちょい登場する須貝

6人とも同じ大学のアメフト仲間です。
その飲み会の帰りに哲朗は10年ぶりに美月と再会します。
でも・・・。
彼女は男の姿をしていました。

「オレは男だったんだ。ずっと前から。おたくらと会うより、もっと昔から」


美月は 性同一性障害だったんです。
自分の生まれ持っている性に違和感を抱く。
彼女は女として生まれてきましたが心は男。
心と体の性別が一致しないことです。

前に見たドラマ『ラストフレンズ』を思い出しました。
性同一性障害で悩むルカと本書の美月がダブります。
体は女でも、心は男。

自分の心なんてよく分かってないのに、性別の違和感まであったらと思うと たまらなくなる。

美月の痛々しいまでの心理描写が描かれていました。

「オレは悔しいよ。どんなにがんばってもQBみたいにはなれない」


QB (哲朗のこと、クォーターバックの略) に憧れる美月。
その苦しみは本人じゃないと理解できないものですよね。
ひだまりさん。は、想像することしかできませんが胸がキリキリと痛みました。
そんな彼女を女優の中谷美紀さんが演じられるようです。
ちょっと楽しみでもあります。

美月の告白はまだ続きます。
事もあろうか人を殺してしまったと・・・。

メビウスの帯にいる私たち


殺人事件の行方も気になりますが、それよりも深く共感したことがあります。
それはこの物語のテーマでもある "ジェンダー" に関することです。

東野圭吾さんは、本書の登場人物を介して男と女の関係をこう書いています。
男と女はメビウスの裏と表の関係にある、と。
馴染みがあるのはメビウスの輪ですかね。
前に読んだ 岡嶋二人さんの『クラインの壺』でも書きましたが、表だと思っていたら裏になっていたりするやつです。



そして、この世のすべての人はこのメビウスの帯の上にいるということ。

この世のすべての人は、このメビウスの帯の上にいる。完全な男はいないし、完全な女もいない。


男だからこうとか、女だからこうでなければならないとか。
そんな境界線を引くこと自体がナンセンス。
・・・というか、人って様々だから境界線など引けないですね。
ただ単に男や女と一括りにしても、彼らの中には異性の部分もあったりします。
本書の登場人物、美月もそうです。

元々、すべての人間は完全な黒でも白でもない。黒から白に変わるグラデーションの中のどこかだ。彼女はちょうど真ん中ということになる


ちょうど真ん中にいる彼女は、男心と女心を持ち合わせています。
世の中の人間を境界線で分けてしまうと、それで苦しむ人たちもいるんですよね。
そのことに今更ながらに気づきました。

タイトルに込められた意味


この物語のタイトルに込められた意味。
それは深く重いものでした。

どんなに性同一性障害という言葉がクローズアップされても、何も変わらない。受け入れられたいという我々の思いは、たぶんこれからも伝わらない。片想いはこれからも続くでしょう


受け入れられたい・・・。
こんなにも真摯で切ない片想いは他にないかもしれません。
人間は未知のものを恐れて排除しようとするから。
・・・現実的なとらえ方です。
本書で取り上げられているジェンダー、性同一性障害、半陰陽・・・。
彼らの思いを受けて、少しでも苦しみが軽減される社会になれば良いなと思います。
まずは知ることから。

それから他にも 「片想い」 が描かれています。
美月の理沙子への切ない恋心。
殺された戸倉の一方的な想い。

人って、さまざまな片想いをしているんですね。

このタイトルしっくりくるなと、しみじみ思いました。

悲しき結末


ラストは殺人事件の真相が明らかになります。

死ぬとわかっている友達をほうっておける?あなたはどうせ彼を探すことをやめない。


まさか、あの人が・・・!?
彼とは誰のことか。
やっぱりミステリーも上手い東野さんでした。

そして背後には驚くべき組織が・・・。
ミステリーとしてのポイントは2つです。

・美月は本当に殺人を犯したのか
・性同一性障害のウラにひそむ事件の真相

切ない結末でした。
読んだ後に悲しさがジワジワときます。
そして彼らを通して友情も感じる。
・・・何ともほろ苦い物語でした。






本書にでてくる『サンタのおばさん』。
劇団金童の芝居として登場するのですが、実はこれ、絵本になっているんですよね。
東野圭吾さん初の絵本・・・ということで、以前このブログでも紹介しました。

『サンタのおばさん』東野 圭吾 / ほっこりと愛情に溢れた絵本 - 東野 圭吾

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2 Comments

ふなきあきら  

こんにちわ
私も以前読みました。

作家によって、色ってあると思うのですが、
東野さんは、作品ごとに色が様々あり、
今、一番のお気に入りです。

なので、今、東野作品を読み漁っています。

ほんと、どれも楽しめます。

また遊びに来ますね。

2017/06/10 (Sat) 19:28 | EDIT | REPLY |   

ひだまりさん。  

ふなきあきら さんへ。

こんにちわ。
コメントありがとうございます(*^o^*)

私も東野さんの本好きで、短編以外はほとんど読みました!
確かにいろんな色を持つ作家さんですよね。

流星の絆、手紙、白夜行、大好きです。
あとパラドックス13も東野さんには珍しくSFっぽくて印象に残っています。
プラチナデータも面白かったし、変身、分身とかも好きです。
・・・と、キリがないのでこの辺にしておきます(^_^;)

2017/06/10 (Sat) 20:42 | EDIT | REPLY |   

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