『命売ります』三島由紀夫 /【感想】三島が描く命と皮肉

三島が描く命と皮肉―。

三島由紀夫さん『命売ります』。
インパクトあるタイトルですね。三島由紀夫さんの小説を初めて読みました。

少しだけネタバレあります。

『命売ります』あらすじ

ユーモアあり、驚きあり!? 三島の皮肉を存分に感じた1冊。

『 命売ります』三島由紀夫 オススメ度 : 感動 : 意外さ : 読みやすさ :

【あらすじ】
目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ…。危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。死にたくない―。三島の考える命とは。―「BOOK」データベースより―

面白かったです。最後にガツンときました。これはオススメ (*^^*)

『命売ります』感想

ひだまりさん。三島由紀夫さんの著作を読んだことあったかな?・・・ひょっとしたら教科書とかで読んでいるのかもしれませんが、(覚えがないので とりあえず) 初めてです。

読みやすい!! しかも面白い!! ・・・けどちょっぴりエロい。

なんかもっと難しくて読みにくいのかと思いきや、スラスラと読めてしまいました。エロさは充分に伝わってくる・・・ ^_^;

三島由紀夫が描く命と皮肉。

それについて羽仁男を通して見えてくるものがありました。

死に損なった男

新聞の活字だってみんなゴキブリになってしまったのに生きていても仕方がない

ある日、新聞の活字がゴキブリに見えてしまった羽仁男。生きていても仕方がないと思い、自殺を試みます。

活字がゴキブリ・・・なんて、想像したくないけどユニークな発想。

でもそれは未遂に終わり、死ねなかった羽仁男にとって "何だかカラッポな、すばらしい自由な世界" がひらけました。
そして、命売ります。・・・と、新聞に広告を出し、自室のドアに 「ライフ・フォア・セイル 山田羽仁男」 とレタリングした紙を貼る。

命売ります!?
・・・軽い (笑) コメディのような面白さがあります。

最初に読んだとき、なぜ 彼は死にたくなったのか、そして "何だかカラッポな、すばらしい自由な世界" がどんななのか、よく分かりませんでした。でもその部分を何回か読むうちに、なんとなくですが彼の気持ちが理解できたような気になりました。

何だかカラッポな、すばらしい自由な世界

自殺も自殺未遂もしたことがない ひだまりさん。には、羽仁男の気持ちは分かりません。

でも、頑張っていたけど糸が切れたような、どうにでもなれ!!・・・というような気持ちなら分かる。

心が "カラッポ" 状態で、自分が無敵になったような妙な錯覚に陥ります。「なんでも来い!」 「どうとでもなれ!」・・・という感じで、根拠なく強気になる ^_^;
これが "すばらしい自由な世界" でしょうか。(つまりは自暴自棄?) ・・・そんなときに、彼は死に取りつかれてしまいます。

ありますよね?頑張りすぎちゃって、なんだか疲れてしまうこと。この小説を読んで、そういうときって 死が隣にいるのかな・・・と、少しだけ怖くなりました。

なかなか売れない命

主人公の元には、命を買いに 様々なお客が来ます。でも、なかなか命は売れません。彼は死にたいのに死ねないんです。運よく (?) 生き延びてしまう。ちょっと苦笑い。・・・三島の皮肉を感じます。

この小説は 様々なストーリーが詰まっている連作短編集のような感じです。

その一つ一つのストーリーが面白かったです。るり子の話、治験の話、吸血鬼の話、にんじんの話、ACS (アジア・コンフィデンシャル・サーヴィス) という秘密組織・・・。

ひだまりさん。が 好きなのは、吸血鬼のストーリーと、にんじんのストーリーです。吸血鬼の女と一緒に暮らし始める羽仁男は彼女を愛し、にんじんで暗号を解読するシーンは頭が良い。命を買おうとするお客と接するうちに、彼の心は少しづつ変化していきます。

羽仁男の命と死生観

羽仁男の命と死生観。
本書のテーマというか、全体を通してそれが描かれていました。様々なお客と出会ううちに、彼は命に執着するようになります。

「どうでも死にたくない」

突然 死ぬのが怖くなるんです。あれだけ命を粗末にした彼が・・・。ちょっと不思議な気持ちになりましたが、その心の変化が面白いなと思いました。

ふと、以前に実家に帰ったときに 父が言ったひとことを思い出しました。

「朝、目が覚めて自分が生きていることが嬉しい」

・・・確かそのようなことを言っていました。そのときは そんなものかな・・・と聞き流していたのですが、この小説を読んでいたら そう言えばと頭をかすめました。生きている喜びは、私よりも父の方が何倍も強いのかもしれません。

人生は終わりがあるから輝かしい。・・・とはよく言いますが、父の言葉や、この小説の主人公を見ていると全くその通りだなと思います。終わりを考えたとき、生きていることが幸せに思える。そうやって1日1日を楽しく生きていきたいですね。

どんでん返しと皮肉な結末

ラストはどんでん返し的なものがありました。スピーディな展開にギョっとします。羽仁男を狙うのは・・・!?

そして最後にキツイひとことが待っています。ぜひ本を読んでみてください (*^^*)

著者である三島由紀夫の皮肉を存分に感じました。死にたいと思う時には死ねず、生きたいと思った時には命を狙われる。なんとまぁ、羽仁男がかわいそうになります。

命を粗末にした彼が生きたいと願うも、時すでに遅し・・・ということ?

皮肉な結末でした。

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