『盤上の向日葵』柚月裕子 /【感想】盤上に咲く向日葵と呪われた運命

実業界の寵児で天才棋士。本当にお前が殺人犯なのか?

柚月裕子さん『盤上の向日葵』です。
これは かなり面白かったです。ミステリーなのに、ほとんど泣きながら読みました。

少しだけネタバレあります。

『盤上の向日葵』あらすじ

柚月裕子が描く 慟哭のミステリー!!

『盤上の向日葵』 オススメ度 : 感動 : 意外さ : 読みやすさ :

【あらすじ】
埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは―!?―「BOOK」データベースより―

向日葵から夏をイメージしますが、表紙に描かれているのは雪と将棋の駒。素敵な表紙です。過酷な将棋界、そしてミステリーがバランス良く描かれていました。天才棋士の子ども時代を読んでいると泣けてきます。展開が少しだけ予想できてしまったので、そこは ★4つとしました。

『盤上の向日葵』感想

ひだまりさん。が 柚月さんの本を読むのは『臨床真理』、佐方貞人シリーズ『最後の証人』に続き3冊目です。その時にも感じたのですが、登場人物が魅力的なんですよね。本作『盤上の向日葵』も例外ではありませんでした。

刑事の石破佐野、天才棋士の上条桂介、彼に将棋を教える唐沢、真剣師の東明・・・。

どのキャラも個性的。特に東明のキャラが凄まじくて面白いなと思いました。将棋はピカイチだけどプロ棋士にはなれず、性格は最悪。でも完璧じゃないからこそ人間味を感じます。

柚月裕子が描く過酷な将棋界

タイトルを見ると 将棋のお話なのかなと思うのですが、あくまでも本書はミステリー小説です。

その中心にあるのが将棋。読みやすいので、わからない人も難なく読めるのではないかと思います。そして 少しだけ興味が持てる。

将棋界って年齢制限もあるし、超過酷・・・。

認識はしていたのですが、改めてプロ棋士って すごいんだなと思いました。

将棋のプロは、一度に百手以上を読む。有望な手を三手から五手くらいに絞り、それぞれにつき数十手先まで検討する。

卓抜とした記憶力・・・。IQが低いひだまりさん。には、とてもじゃないけどマネできません。まさに超人のなせる技ですね。

天才棋士・上条桂介は 殺人犯なのか?

実業界の寵児で天才棋士。本当にお前が殺人犯なのか?

帯をよむと、何となくあやしい人物がわかってしまうのですが・・・ ^_^;
埼玉県天木山山中で白骨死体が発見され、刑事である石破&佐野コンビは遺留品の線から捜査にあたります。"実業界の寵児で天才棋士" とは 上条桂介を指しています。

ここがポイント!

  • 天才棋士、上条桂介は 犯人なのか?
  • 一緒に埋められていた初代菊水月作の名駒の意図するものは・・・?

この小説は、石破&佐野コンビの捜査 (遺留品である初代菊水月作の名駒の行方) と、上条桂介の幼少期からの過酷な人生が交互に描かれています。

石破&佐野コンビの地道な捜査も面白いことながら、桂介の幼少期ストーリーを読むと泣けてきました。始終 目元を潤ませて読んでいた ひだまりさん。彼が不憫に思えてなりません。唐沢の優しさには胸を打たれました。桂介にとって将棋は "生きること" だったんですね。

そんな彼が本当に殺人を犯したのでしょうか? そして埼玉県 天木山で発見された遺体は誰なのか?

最後まで気が抜けませんでした。

ところどころ推理しながら読んでいたのですが、最後までわからなかった部分があります。

高価な駒をなぜ遺体と一緒に埋めたのか。

売れば 600万にもなるという初代菊水月作の名駒。犯人が埋めた意図とは? ・・・ずーっと疑問だったのですが、遺体の身元がわかったときに、その駒を一緒に埋めた犯人の気持ちが少しだけ理解できたような気がしました。

ゴッホの向日葵と狂気

本書には、ゴッホの向日葵がでてきます。

『盤上の向日葵』というタイトル。盤上からは将棋が連想できますが、向日葵は何を指しているんだろうと不思議に思いながら読んでいると、ゴッホの絵画がでてきました。

ゴッホが描いた向日葵は、亡き母そのものだった。

ヒマワリは桂介の母が好きだった花で、それを通して亡くなった母を思っていたんです。

フィンセント・ファン・ゴッホと言えば・・・。

先日、原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んだばかりでした。精神を患いながらも絵を描き続けたフィンセントを描いた物語です。こちらもオススメ。

『たゆたえども沈まず』原田マハ/【感想】ゴッホ 「星月夜」 / 兄を支えたテオドロス - 原田 マハ

原田マハさん『たゆたえども沈まず』 ゴッホの壮絶な人生を描いたアート小説の最高峰! 原田マハさんのアート小説です。 今回は フィンセント・ファン・ゴッホ を・・・

ゴッホが絵ににかける情熱、そして狂気。

それは『盤上の向日葵』でも感じたことです。過酷な将棋界を描いていますが、棋士たちの情熱、そして 東明や後半の桂介からは ある種の狂気を感じました。

人は 情熱をかけるほどのものがあれば強くなれる (良いか悪いかは別として)。東明も、桂介も・・・。ときとして、その強さは狂気となり得るものかもしれません。

彼らとフィンセントがダブって見えました。

呪われた運命と悲しい結末

桂介がずっと見てきた 盤上に咲く向日葵。それは彼にとって導きであったはずなのに、最後は・・・。これも呪われた運命なのかもしれませんね。

ラストは少しだけ悲しくなりました。でももし彼から将棋がなくなったとしたら、この展開も致し方ないのかなと思います。ここで描かれていた彼の人生に思いを馳せてしまいました。

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