『ダブル・ファンタジー』村山由佳 /【感想】すれ違う男女とファンタジーの結末

どれほど愛し合っていても 男と女はじつはまったく別のものを見ているのだ

村山由佳さん『ダブル・ファンタジー』
・・・複雑な読了感です。読むのに時間がかかってしまいました。

少しだけネタバレあります。

『ダブル・ファンタジー』あらすじ

すれ違う男女を描いた官能の物語!!

『ダブル・ファンタジー』 オススメ度 : 感動 : 意外さ : 読みやすさ :

【あらすじ】
奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ―。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら―そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。―「BOOK」データベースより―

『ダブル・ファンタジー』感想

官能小説 (?)って、初めてよみました。

・・・生々しいと感じましたが、言葉の表現は美しかったです。でも深くハマれず 4分の1くらいのところで読むのを断念しようと思ったのですが、他の人はどんな評価をしているんだと気になり しばらくレビューを漁っていました。

レビューの評価はみごとに真っ二つ。(←Amazonです) 読むのをやめようと思いつつも、結局は全部読んでしまいました。やめられなくなる魅力というのが確かにあるんです。

共感はできなかったけど・・・

誰ひとりとして登場人物が好きになれませんでした。主人公の奈津をはじめ、夫の省吾、友だちの杏子、そして奈津と恋愛関係になる男たち。

次々と浮気 (恋?) を繰り返してしまう彼女の気持ちも共感できません。

友だちの杏子にしてもあまり人間味が感じられませんでした。・・・もしかしたら、1番恋愛にかまけていた時期に読んでいたら、また違った感想になったのかもしれませんが。

そして志澤がキモイ。(←思わず本音が出てしまいました) キリンに似た岩井も。

前半は主に志澤とのメールのやり取りで進んでいくのですが、それが苦痛でした。メールの言葉づかいから彼を想像するのですが、どうしてもお爺ちゃんを連想してしまいます。カッコ良いオジサマではなく。

でも、奈津の恋の行方が気になり読むのをやめられません。そして読み進めるうちにだんだんと面白くなってくるから不思議です。

奈津に共感はできないのだけど、なんとなく気になってしまうんです。それは彼女のことが痛々しく思えてしまうからかもしれません。

浮気から始まる 「恋」

『ダブル・ファンタジー』は、浮気から始まる 「恋」 を描いています。

・・・不倫ともいう。
夫の省吾がいながら、奈津は志澤と恋をし、岩井、大林・・・と、捨てられて、捨ててを繰り返します。

自分にとってはどれもが 「恋」 だったなどと言い張っても、誰が信じてくれるだろう。

恋、なんでしょうね、それでも。

人を好きになる気持ちはもうどうしょうもない。そして一旦好きな人ができたら最後、前の彼を好きだった気持ちは色褪せていくんです。・・・女って特にそうだと思います。1度でも冷めてしまうともうダメなんですよね。

奈津の夫・省吾にもあまり魅力は感じなく、別れを切り出されてもしょうがないかなと思いました。

彼女が別れを告げるシーンが潔くて好きです。

ごめん。―悪いけど、別れて

省吾にとっては唐突かもしれませんが、奈津は かなり前から思い悩んでいたことで。もうダメだと思った限界だったんですよね。

『ダブル・ファンタジー』に込められた意味

ところで『ダブル・ファンタジー』にはどんな意味があるのかと不思議な気持ちで読んでいたら、後半に、あるアーティストのアルバムがでてきました。

ジョン・レノン&オノ・ヨーコの 「ダブル・ファンタジー」 です。

・・・このアルバムは聞いたことがないのですが、彼らが名前を呼び合う曲は、過去に学校の授業で聞いたことがあって。ジョン・レノンというと、あの曲の印象が強く残っています。とても奇妙な曲でした。

少しだけ 本書のタイトルにもなっている 「ダブル・ファンタジー」 を聞いてみました。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコが交互に歌っていて、まるで会話をしているような雰囲気のアルバムです。それを本書ではこんな風に書いていました。

どれほど愛し合っていても男と女はじつはまったく別のものを見ているのだという真実を、あんなにもくっきり浮き彫りにしてみせたアルバムはなかったのではないか―。

・・・正直、少しだけしか聞かなかった ひだまりさん。は、ここで描写されているようには思わなかったのですが、"どれほど愛し合っていても男と女はじつはまったく別のものを見ているのだという真実" というのには、頷いてしまいました。

村山由佳さんの『ダブル・ファンタジー』で描かれている男女の 「恋」 は、まさにそんな感じなんです。同じものを見ているのは、ほんのひとときのことで、あとはすれ違いばかり。奈津と志澤の恋愛に至っては、すれ違いしかなかったのでは?と思うほどです。

男女がそれぞれ見ているものはまったく別の幻想。

・・・だからダブル・ファンタジーなのかな。ちょっぴり切なくなりました。

満たされない心

結末はよく分からなかったけど、この描写に心打たれました。

ああ。なんて、さびしい。どこまでも自由であるとは、こんなにもさびしいことだったのか―。

けっきょく、奈津の心はずっと寂しいまま。夫がいても自分の思うままに恋愛をする。

・・・でもそれって幸せな気がしません。

恋愛体質な彼女ですが、心が満たされてはいないような気がします。・・・きっと大林ともそのうち別れるんだろうな。そして寂しさからまた 「恋」 を繰り返す。・・・ちょっと痛々しく思えてしまいました。

「恋」 する気持ち

前半は気持ち悪さがあとをひきましたが、読みおわってみると、なかなか深い物語なんじゃないかなということに気づきました。

ひだまりさん。は、時間がかかってしまいましたが、分厚いながらも読みやすいです。いつも読んでいるものとはひと味違った小説で、複雑な心境にもなりましたが、それはそれで良いのかなと思います。

奈津のようにはなりたくないけど、いつまでも 「恋」 をする気持ちは大切にしようと思いました。

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